蓼科日記(第4期)

これを遺書とする

私の財布と初音ミク

財布をなくした。

今日は荷物を取りに昼から駒場キャンパスに行った。大学に着いたときには確かに手許にあったのだが、荷物を回収して一息ついたところで紛失したことに気付いた。思い当たるところを血眼になって探したのだが、見つからなかった。最近の駒場キャンパスは、レポートの締切が集中している学期末にノートパソコンが6台盗まれるという悪魔の所業の舞台になっていたり、茶色い紙袋を被った子どもが走り回ったりしていてとにかく治安が悪いから、どこかですられたりしたのかもしれない。

 

 

◆◇◆

 

財布をなくすと不便である。銀行やカード会社に片っ端から電話し、各種ポイントの無事を確認し、警察に届け出をして、体力もなくした。特に警察で書く「遺失届出書」が辛い(参考)。幸いお世話になったことのない方のために説明すると、この届出書は単に「なくしました」では済まない。財布をなくした場合、中身を思いつく限り書き出していくよう指示され、「一万円×m枚、五千円×n枚……」「運転免許証」と枠を1つ埋めるごとに自分の愚かさが胸に迫ってくるのである。

なくしてみてわかったのだが、クレジットカードをなくすと買い物ができないし、キャッシュカードをなくすと預金が下ろせないし、免許証や学生証をなくすと身分証明ができない。三重苦である。コールセンターのお姉さんが、まるでディストピアSF世界の合成音声のように、再発行まで1~2週間かかるという残酷な事実を告げてくる。2週間もの間、Amazonで買い物するのに家を出なければならないというのは、現代社会においては死を意味する

しかし、クレジットカードもキャッシュカードも、免許証も学生証も、手間と時間*1をかければ再発行できる。問題は現金である。現金は再発行できない。間抜けな特別損失を悔やみながら、交番で所持金を思い出していく。

 

◆◇◆

 

コミケコミティアと連戦して現金が手許から逃げていき、財布の中には2,000円ほどしか入っていなかった。そろそろATMに行かねばならないと思っていたので、それはよく覚えている。それから、駒場に着くまでの買い物を思い出す。


 

朝起きてTLを追っていたとき、初音ミクの全面広告が掲載されていることを知った私は、最寄り駅のファミマで読売新聞(とチーズ味のファミチキを買った。お行儀悪くファミチキを口に突っ込みながら、最寄り駅に着く。

 

 

乗り換え駅でふと思い出した。野菜の日のキャンペーン、クリアファイルの第2弾が今日から配布だ。キャンペーンに踊らされる自分のみっともなさを大脳から追い出してNewDaysへと向かう。「対象商品を含めて600円以上のお買い物」という条件、意外と満たすのが難しい。いつもより一段コスパの悪い昼ご飯を買う。余談だが、レジの女性店員がクリアファイルをくれなかったので「クリアファイル、いただけますか?」と聞いたところ怪訝そうな顔をされた。秋葉原NewDaysで限定グッズのクリアファイル(3枚セット、実際高い)を買ったときは、光の速さで渡してくれたぞ? 客層の違いなのか。間違いなくクリアファイルセットを買ったせいですね。

 

◆◇◆

 

「だいたいでいいですよ」

インパルスの板倉に似た物腰の柔らかなお巡りさんが、時間がかなり経過したことを優しく教えてくれた。その声で、意識が交番に戻ってくる。ドアを開け放しにしておかなければならない事情からか、不幸にもオーバーサイズの霧ヶ峰が全力稼働している。夏のくせになぜか肌寒い日の夕方、財布を失った苦々しさと相まって凍えそうになった。

 

だが起きてしまったことは変えられぬ。インパルスの板倉に似た物腰の柔らかなお巡りさんの貴重な時間をこれ以上浪費するわけにはいかない。使い損ねたお金はいくらだ? …………あれ? 

 

◆◇◆

 

かくして、私はほとんど現金を失わずに済んだ*2すべてはこのくそったれた世界に、ミクさんが降臨してくださった御陰である断じて私の浪費癖のせいではない。思えば入稿間際に徹夜で作業しているときも、ミクさんの歌声が私を寝落ちから守ってくれた(徹夜せざるを得なくなったのは私の無計画さのせいである)初音ミクさんは常に我々とともにある。

 

 

生まれてきてくれてありがとう、初音ミク。お誕生日おめでとう。

 

 

 ……財布の紛失には気をつけよう!(例のBGM)

*1:と若干の手数料

*2:話が上手くまとまったので、手痛い手数料のことは忘れよう。