蓼科日記(第4期)

これを遺書とする

あのキス第35話「黎明を過ぎて」 ―― 黒沢さんを変えた白峰さんと、白峰さんを変えたい黒沢さん ――

 ご無沙汰してしまいました。
 今年も独り身の寒さが身にしみる私がやるのも烏滸がましいんですが、せっかくなので便乗してクリスマス的なネタです。

注意
 この記事は、『あの娘にキスと白百合を』単行本7巻まで既読であることを前提に書かれています。ネタバレによって魅力が損なわれるほど浅い作品ではありませんが、未読の方は是非この機会にどうぞ。

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ここまで季節イベントをすっ飛ばして展開してきたので(番外編で回収したものもありますが)ここいらでイベント回ができる事を証明してやるぜ。という気持ちでお送りするクリスマス回でした。――あとがきより

 

 聖女にして魔女・あまねの登場により「3人のカップル」という難しい愛情の形を巧みに表現した6巻に続き、傍系3親等(!)の百合カップルが登場する7巻ですが、やはり最大のテーマは「黒沢さんの変化」(あるいは、成長)と言わざるを得ません。「群像劇」という形式を謳ってはいるものの、やはり『あのキス』は白峰さんと黒沢さんの物語なんだなぁと再確認させられます。

 特にこの35話は、2人の関係性の深化を非常に綺麗に描き出しています。白峰さんに触れて、自分の欠落と向き合い、前に進み出した黒沢さん。そんな彼女が見いだしたのは、自身の欠落から抜け出せていない、過去の自分に重なる白峰さんの姿――

 個人的には、「あたしとおそろい」「友だちの証だよ」(7巻 p.147)という台詞に最もぐっときました。これは明らかに(黒沢さんが、白峰さんを介して出会った)上原さんの「ともだちといえばおそろいよ!」(1巻 p.168)を踏まえた発言であり、たった一コマに彼女たちの物語が凝縮されて感じられるからです。

 連載にも新たなカップルが登場し、ますます広がっていく『あのキス』の世界。拙い筆で恐縮ですが、またどこかでお話させていただければと存じます。